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音と人生を学んだ、知名宏師との時間
VOICE

2024/02/21

音と人生を学んだ、知名宏師との時間

今回のVOICEのゲストは、創業者・知名宏師(ちな・ひろし)と公私にわたって長年交流を深めている紀々(きき)さん。紀々さんは“哲楽家(てつがくか)”という肩書きで「日常で哲学することの愉しさ」を伝え、一方でアーティストとしても活動されています。地元のスーパーマーケット・リウボウストアのテーマ曲「ラララ♪りうぼう」の作曲者でもあり、音楽家として知名オーディオの音の良さを高く評価しています。
多彩な活躍を見せる紀々さんに、ご自身の活動や知名宏師との交流、音楽家から見た知名オーディオの魅力など幅広く語っていただきました。

【PROFILE】

紀々/哲楽家(てつがくか)
1975年沖縄・那覇市生まれ。2012年、これまでの活動を1つにした「哲楽家」として本格スタート。一人舞台「哲楽商店」をはじめ、企業研修、講演会などさまざまなスタイルでの「哲楽 活動を展開している。2013年、リウボウストアのテーマ曲「ラララ♪りうぼう」のヒットがきっかけで、働く現場にエールを贈るCM、テーマ曲を手掛け、哲楽するシンガー・ソングライターとしての活動をスタート。2016年、祖父が遺したレトロなアート空間を、稽古場を探す若手アーティストとともに守るべく「電波堂劇場」と改名、アート発信の場として守っている。 紀々さん公式サイト:https://kikism.net/index.html

14歳の頃からプロの音楽家を目指して本格始動!

6歳の頃からエレクトーンを始めて、14歳のときには舞台に立っていました。最初はストリート(路上)で演奏をしていて、徐々に結婚式場や商業施設などのイベントに呼んでいただけるようになりました。

エレクトーンを本格的に習いはじめたのは12歳の頃から。なかなかいい先生に巡り会えなかったのですが、14歳の頃に沖縄公演にいらした北九州の先生が演奏会で使用するエレクトーンを探していて、たまたま我が家に最新のYAMAHAのエレクトーンがあるのをメーカーさんから聞いて、訪ねて来られて。そのときに先生の演奏スタイルを目の当たりにして、表現方法に一気に惹かれました! それからこの先生のもとで中学2年から高校2年まで、時々住み込みという形で、エレクトーンの修業をさせてもらいました。

本格的にエレクトーンを習ってはいたものの、私は指導者志望ではなかったので昇級審査に興味がなく、ほかの人と競い合うコンクールも苦手で…。そんなときに、その先生はそれぞれの子に合った曲を教えてくれて、“コンクールではないコンサート”に出場することを勧めてくれました。競い合わないコンサートだから、みんな自分らしく演奏できてハッピーになる…私の性格にピッタリでした。

その後、10代後半から沖縄を拠点に音楽家としての活動をスタートしました。私はエレクトーンをスピーカーにつないで音響担当のPA(Public Address)さんに音を調整してもらい、演奏を行います。つまり、お客さまに届く音はPAさんの調整次第となりますが、最初はなかなか自分の納得する音にならなかったんですね。
演奏を始めたときからずっと、スピーカーを通してお客さまに届ける音は、電子音ではなく生演奏に近い音を求めていました。それを伝えても、ベテランのPAさんには若手の自分の意見をあまり聞き入れてもらえなくて。音や現場の人との関係ですごく悩んでいた頃に、知名(宏師)さんのことを聞いて、わらをもすがる思いで訪ねて行った記憶があります。

PA「Public Address(大衆伝達)」の略で、音声や音質、音量を調整し、スピーカーを通して聴衆に伝達する行為を指す。現在は、PAの機器やそれを担うスタッフのことを総称する。PAスタッフは、店頭販売やスピーチ、アナウンス、BGMなどのほか、ライブやコンサートなどで楽器の音量のバランス、音質など、音を総合的に決定していく。

音楽好き×機械好きで一気に“知名仙人”のとりこに!

那覇市の久茂地にあったショールーム兼工房を訪ねて行ったときに知名さんがいらっしゃいました。作務衣を着て、下駄を履いて、まさしく仙人のような風貌で、「留守番の方なのかな」と思ってしまいました(笑)。

第一印象こそ“仙人”でしたが、話をしてみるとすごく優しかったんです。PAさんやオーディオマニアの方のお話は、専門用語が多くて私にとっては難しい場合が多いのですが、知名さんのお話はどんな人よりも分かりやすかったんですね。「用語や理論が分からなくてもいいんだよ。この音、どう思う?」と聞いてくださる。直感的に音をどう感じるか、が大事なんですよね。

私は機械やメカもすごく好きで、いろいろな機材や工具があるショールームに行くだけでもワクワクしました。音楽だけでなく、機械やメカの両方の話題で知名さんと話が合いました。だから知名さんが趣味でプラモデルやラジコンづくりに没頭されていたことは、ものづくりの発想としてすごく理解できます。知名さんの頭の中では全てつながっているんですよね。今考えてもとっても楽しく、ワクワクする時間と空間でした。

余談ですが、その日、家に帰って母に知名さんのことを話したところ、自宅に母が購入した知名オーディオのスピーカーがあったことを知りました(笑)。

音楽家も魅せられる知名オーディオの音

当時、音質の良いスピーカーを探していたんですが、知名オーディオは(高額なので)どうしても手が出せなくて…。久茂地のショールームには当時PAのシステムもあったので、「スピーカーとPAのシステムをレンタルできますか?
と聞いたところ、「持って行っていいよ」と知名さんに言われたんです(笑)。
知名オーディオを初めて使うコンサートでは、事前に知名さんに会場のレイアウトを見てもらい、スピーカーの配置とPAの設定を考えていただきました。「もしPAさんに何か小言を言われたら、(知名がスピーカーの位置を決めたから)『触らないように』と言っていたと伝えなさい」とまでおっしゃってくださったんです(笑)。

コンサート当日、知名さんのアドバイス通りにしたところ、優しい音であるだけでなく、自分が理想とする生演奏の音に近い感じで、これまでの音と比較して明らかに変わりました。さらに、水戸黄門様の印籠のように知名さんのお名前が効果的で、PAさんも何も言わずに対応してくださいました(笑)。そればかりか、音響に詳しいスタッフは「知名オーディオだ!」とわざわざスピーカーを見に来ていましたよ。

以来、知名オーディオのスピーカーを演奏時に使用していますが、特に皆さんに驚かれるのが、BGM演奏をするとき。会場のお客さまたちの言葉を少しもさえぎらないんですね。通常のスピーカーだと、スピーカーの真ん前にいる人に音が直撃してしまいます。そのため音量を下げると、スピーカーから離れた場所では音が聴こえにくいという現象が起きていたんです。
でも、知名オーディオは音量が小さくてもしっかり聴こえます。知名さんはよく「伴奏は聴こえないくらいがいいんだ」とおっしゃっていて、あくまでも人が主役で、“人を包み込んでくれる音”にこだわりを感じました。本当に知名さんは、人にとっての快適さや幸せを考えてものづくりをしているんだな、と思います。

ほかにも音楽家として印象的だったのは、演奏会を一緒に行った東京フィルハーモニー交響楽団の演奏家の方たちが、知名オーディオでご自身の演奏の録音を聴いて、感動していたこと。音色がとても自然で「演奏のときに自分がイメージしている音色と同じでした!
と。楽器の音をそのまま伝える知名オーディオのスピーカーを通して、クラシックの演奏家にも生演奏の臨場感が伝わったんです。
このことをきっかけに、生演奏をする人たちにこそ、知名オーディオで自分の演奏を聴いてもらいたいと思うようになりました。

ユニークな発想と遊び心でとことん楽しむ知名さんのものづくり

知名さんは「売れる、売れない」ではなく、「自分が挑戦したい気持ち」
を大事にものづくりをしていたんだと思います。だから、ふとした瞬間に“知名少年”に見えるときがあるんですよね。すごくピュアですし、困ったときは発明のチャンスとばかりに、「人が悩んでいるところから製品が生まれたとよくおっしゃっていました。

例えば、知名オーディオの素材は、もともとは塩ビ(ポリ塩化ビニル)ではなかったけど、「重い」「少しでも安くならない?」という意見があって塩ビにしたんですよね。知名さんは「人の意見を取り入れたら、音も良くなった。人のためにやってみるもんだね」と笑っていました。

知名さんはユニークな発想と遊び心で、ものづくりをとことん楽しんでいたと思います。材料も固定概念で選ばず、例えば円盤型のスピーカーにステンレスのサラダボールを使ったり、スプーンでマイクを作ったり。使用する材料はメイクマン(沖縄県を拠点に展開しているホームセンター)でそろえていらっしゃいました(笑)。
大事なのは何を使うかではなくて、いい音が出ること。だから先入観を持たずに、音質の良さと独創的

今も知名さんに教わった言葉で、音楽家としての自分のチューニングを合わせています

私が大学時代に東洋哲学を学んでいたこともあり、独特の世界観を持つ知名さんとは話がはずみました。オーディオや音楽の説明も人生になぞらえて教えてくださったり、知名さんへの音楽相談はいつしか人生相談に変わっていました(笑)。ゆんたく(沖縄の言葉で“雑談”の意味)が長くて、気づけば夕方になっていたこともしばしばでした。

音楽家として、レコーディングに完璧を求めると苦しくなっちゃうんです。そんなときに「何で完璧を求めるの? 機械になろうとしているの?」とおっしゃってくださって。自分がどこに向かっているのか迷っているときに「(不完全な)人間であっていいんだよね」という思いに立ち返らせてくれて、完璧主義になりそうなところをいつもほぐしていただきました。

久茂地のショールームは私にとってカウンセリング室のような空間でしたが、大事なのはその空間に知名オーディオのスピーカーから音楽が流れていることだったと思います。それは、知名さんご自身が「知名オーディオは人を幸せにする」ということを信じていたからではないでしょうか。

知名さんはゆっくりした語り口で、いい塩梅のテンションの声質なんです。全くお説教くさくないし、まるで柳のようなひょうひょうとした感じ。「いつかは、知名オーディオ」と言われるほど高額で手に届かないけれど、それでも憧れてショールームに通う人を、知名さんはいつも温かく迎え入れていました。悩みを抱いた人や、心がくたくたになった人が、ショールームを訪れて知名オーディオの音を聴いたり、知名さんと話をしたりすることで救われていたんだと思います。

私は今でも悩んだときには知名さんの言葉を思い出して、音楽家として自分の中のチューニングを合わせています。「機械になろうとしているの? 人間であっていいんだよね」と。

知名オーディオショウルーム
〒904-0004 沖縄県沖縄市中央3-16-6
TEL:098-938-3994

営業時間:13:00〜17:00
日曜定休

※ご試聴・ご来店はご予約制